自動車メーカー 「ECMO」の生産体制を! ( 日本政府 準備せよ! )「ECMO治療」 すでに新型コロナ重症患者を救命 救命率70%超の「最終的な切り札」とは?



新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、国内でも陽性患者が増加し、一部の患者で重症肺炎に陥るケースが出てきている。有効な治療薬もないなかで、多くの人が、重症化、死亡に関する不安、恐怖を抱えている。しかし、東京都立多摩総合医療センター救命救急センター部長の清水敬樹医師は、「重症化した場合の集中治療として、体外式膜型人工肺(Extra Corporeal Membrane Oxygenation: ECMO)という装置の装着が救命のための最終的な切り札になる」と訴える。

 清水医師は、日本集中治療医学会などが新型コロナウイルス対策の一環として開設した、医療者向けの電話相談窓口「日本COVID19対策ECMOnet」の窓口担当者でもある。ECMOとはどんな装置か、新型コロナウイルス感染症の重症肺炎に対しECMOでどれくらい救命できるのか、可能性などを聞いた。

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「現在、日本全国で新型コロナウイルス陽性患者の増加とともに、重症患者も増えており、ECMOにより集中治療管理されている患者も増加しつつあります」

 清水医師はそう話す。新型コロナウイルス感染では、その8割は軽症との報告もあるが、高齢者や持病のある人を中心に、一部の患者で肺炎の重症化もみられている。

 ECMOは、機能が低下した肺を、人工肺で補う装置。首や足の付け根から太い管を入れ、血液をからだの外へ吸引し、人工肺で血液に酸素を取り込ませ、体内へ戻す。おもに重症肺炎などが原因で肺での酸素の取り込みがおこなえなくなった状態の患者に用いられ、自分の肺の機能が回復するまで、人工肺が肺の機能の代わりを担う。

「ECMOの人工肺で1~2週間ほど呼吸を維持できれば、治療のための時間稼ぎが可能になります。その間にいくつかの新たな薬剤的治療を試すことができる。自分の肺を休ませながら、水分を大量に吸収したスポンジ様の肺を除水して、乾いたスポンジ様にするだけでも機能が回復し、深刻な容態から脱することもあります」(清水医師)

 ただし、合併症の起こる可能性もある。からだに太い管を入れるため、挿入時に血管損傷が生じる危険がある。さらに施行中に血液を固まらせないようにする抗凝固剤(ヘパリン)を使う。それにより、胃や腸管、脳など、さまざまな部位で出血が起こりやすくなるという。また、あくまでも呼吸維持のための時間稼ぎに寄与するもので根治的な治療ではないことに留意する必要がある。

 ECMOはとくにウイルスによる重症肺炎で治療成績が良いことは知られており、新型コロナウイルス感染の重症肺炎でも効果が期待されているという。

「もともと“ECMO大国”である中国でも現在、新型コロナウイルス感染による重症肺炎患者に対し、相当数のECMOが使われているようです」(同)

 ウイルス性肺炎へのECMOの有効性が世界的に周知されたのは、2009年の新型インフルエンザのパンデミック以降だ。このとき、新型インフルエンザにより重症呼吸不全に陥った患者の多くがECMOによって救命され、欧米でのECMOによる救命率は70~80%だったという。日本でも14例にECMOが使用されたが、当時はECMO管理に熟練した医師も不在という状況で合併症に悩まされるなどして、救命率は38%にとどまった。

 このときの苦い経験から、日本呼吸療法医学会が2012年に『ECMOプロジェクト』を立ち上げ、日本でも急性呼吸不全症例に対するECMOによる治療成績を上げようと、情報の共有、管理方法の勉強会や海外研修などをおこなってきた。参加施設はいまや全国93施設(2020年2月27日現在)だ。

「日本COVID-19対策ECMOnetの中心的施設では、ECMOの治療成績は大変優れており、世界と肩を並べる70~80%の救命率を達成しています。新型コロナウイルス感染でもすでに数例、重症患者をECMOにより救命しています。症例数を多く経験している施設であれば合併症の割合は高くないです。今後、さらに重症患者が増加した際にはECMO管理が切り札の一つになるのは間違いありません」(同)

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参考

日本政府 準備せよ! 「ECMO治療」 すでに新型コロナ重症患者を救命 救命率70%超の「最終的な切り札」とは?

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