日本は、EV強国になれるか? 「EV強国」へ中国、猛ダッシュ 最大市場で戦略練る自動車メーカー(CASE対応、人工知能研究急げ!) ハイブリッド車(HV)は、時代遅れに!?
 石原さとみ PHV 00

  自動車産業の変革期を象徴する電気自動車(EV)市場に、中国が猛攻勢をかける。新たな環境規制を来年導入して関連産業を育成し、「自動車強国」の地位獲得を狙う。世界最大の自動車市場となった中国がEV普及にかじを切ったことで、自動車産業の覇権争いにはEV戦略が大きく影響することになる。各国の大手メーカーは対抗策を迫られている。

外資呼ぶ国家戦略

 先月27日、中国・広州。日産自動車は現地企業との合弁会社の工場でセダンタイプのEV「シルフィ ゼロ・エミッション」の生産を始めた。

 記念式典で西川(さいかわ)広人社長は、「EVの普及・拡大で世界をリードする中国市場で大きな役割を担う車だ」と強調した。

 この車がベールを脱いだのは4月の北京モーターショー。その会場では、他の自動車大手もEV戦略を打ち出した。トヨタ自動車はスポーツ用多目的車(SUV)「C−HR」をベースにしたEVなどを2020年に発売する方針を表明した。ホンダは年内に、現地ブランド「理念」のSUVのEVを中国専用車として投入する。

 ドイツのフォルクスワーゲン(VW)も中国でEVを強化する。25年までに年150万台以上のEVを販売する目標を掲げ、EVなどの開発や生産で、中国に100億ユーロ(約1兆2900億円)を投資するという。

 米EVメーカー、テスラも中国・上海にEVと電池を生産する工場を設ける計画。近く着工し、2年ほどで生産が始まる見通しだ。

 背景には、自動車強国を目指す中国の国家戦略がある。

 日本やドイツの自動車メーカーは、ガソリンやディーゼルなどのエンジン車で長年、技術を蓄積しており、中国がこの分野で追いつくのは難しい。だが、中国は世界最大の自国市場の“ゲームのルール”をEV普及を促すものに変えることで、外資の関連投資を呼び込み、技術も集めて自国メーカーの育成につなげようとしている。

 来年には、自動車会社にEVを含むエコカーの一定比率の現地生産を義務付ける「NEV(新エネルギー車)規制」を導入する方針。EVの普及に欠かせない急速充電器についても、日中の業界団体が先月28日に、次世代規格を共同開発する覚書に調印した。

 大手メーカーは、世界最大の自動車市場でのEV拡大の波に乗り遅れるわけにはいかないのが現状だ。

伸び悩む日米市場

 欧州もEV普及に力を入れている。燃費性能の高さでディーゼル車が人気だったが、15年に発覚したVWの排ガス不正問題を契機に、不信が高まり、排ガス規制は厳格化の方向。英仏両政府は、40年までにエンジン車の販売を禁止する方針で、EVなど電動車へのシフトが進む見通しだ。

 一方、米国では、トランプ大統領が燃費基準を緩める方針を示した。カリフォルニア州が独自に環境規制を導入し、EV普及を後押しするはずだったが、これを認めない構え。大型エンジン車の販売好調が米メーカーの業績を支え、景気にも好影響を与えているとの判断があるとみられるが、EVの普及が遅れ、関連技術の発展も鈍化する可能性がある。

 日本市場も伸び悩む。トヨタやホンダがEVを売らない中、“孤軍奮闘”するのは日産の「リーフ」だが、今年4月までの約7年半の累計販売台数は10万台で、人気車なら1年間で達成する数だ。充電できる場所は増えてきたが、消費者の不安はなお払拭されていない。

収益悪化を懸念

 調査会社の富士経済は、世界のEV販売台数が30年に昨年実績の約10倍の722万台に増えると試算。その6割近くを占める見通しの中国市場にはEV拡販の商機があるが、手放しで喜べない。

 ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は、「在庫が積み上がり、収益性は悪化するだろう」と指摘する。EVはただでさえ電池のコストが高く、自動車会社が得る利益は小さい。また、大気汚染の影響などでエンジン車のナンバープレート取得が難しい北京などの都市部以外ではEVの魅力は薄れ、つくった数だけ売れる保証はないからだ。

 それでも多くの自動車会社にとって、中国は米国と双璧をなす主力市場だ。米国の自動車輸入制限の検討もあって中国市場の重要性は高まり「中国で売らないという選択肢はない」(自動車大手幹部)。ただ、中国では比亜迪(BYD)など、地場のEVメーカーも台頭してきており、日本メーカーは「危機感をもって戦わなければならない」と警戒感も強めている。

 NEV(新エネルギー車)規制 中国で年3万台以上生産・輸入する自動車メーカーに対し、一定割合でNEVの生産を義務付ける規制で、2019年に導入予定。19年は生産・輸入台数全体の10%、20年は12%と設定された。NEVは電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)が対象で、日本勢が得意なハイブリッド車(HV)は除外された。