トヨタとソフトバンクのロボ、競技会の標準機に採用 
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 ドイツのライプチヒで4日夕(日本時間5日早朝)まで開いた「ロボカップ」でトヨタ自動車とソフトバンクグループのロボットが家庭用部門の競技に使う共通ハードに選ばれた。ロボット技術の開発をけん引する競技会で標準機となることで、世界の研究機関が両社のロボットを使い新たな用途やソフトウエアの技術を競うようになる。家庭用ロボを巡る国際的な覇権争いで両社が先んじようとしている。

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6月8日
グーグルの先へ IoT×人工知能


AI=人工知能に莫大な研究開発費用を投じているグーグルやフェイスブックといったアメリカのIT企業。一方、次の勝負の舞台は、人工知能とあらゆるモノがネットワークにつながるIoTを組み合わせる技術だとして、その一歩先を目指すのが日本の大学発ベンチャー「プリファードネットワークス」です。
 IoTと人工知能を組み合わた研究、製品開発を行う社員50人足らずの新興企業は今、トヨタ自動車、ファナックなど日本を代表する企業と相次いで提携しています。長年、世界のモノ作りをけん引してきた日本メーカーと組むことで、グローバル競争を勝ち抜こうという西川徹社長(33)に今後の戦略を聞きました。

 
人工知能とハードウェアを一緒に開発


西川徹社長は10年前、東京大学大学院在籍中に起業。同じ学科で人工知能などを研究していた岡野原大輔さん(現・副社長)ら6人の学生が創業メンバーです。

人工知能が埋め込まれたロボットみずからが学習し、その経験を複数のロボットがリアルタイムに共有できる技術が強みです。IoTが大きなトレンドになり始めた2年前、西川社長は、新たなビジネスに乗り出します。人間が生み出す限られたデータではなく、無数の機械が生み出す膨大なデータを処理するため、人工知能の技術を活用する事業です。

おととし、NTTから出資を受けて以降、ファナック、トヨタと相次いで資本業務提携しました。このうち、トヨタとは自動運転の分野で提携。ことし1月に米ラスベガスで開かれた世界最大の家電ショー=CESではデモンストレーションを披露しました。人工知能が埋め込まれた複数のロボットカーが狭いスペースを走行します。始めは衝突を繰り返しますが、ロボットが、次第にほかの車と衝突しない走行パータンを割り出します。どう走ると衝突し、どう走れば衝突しないかをみずから学習するのです。

産業用ロボットメーカーのファナックとは、モノづくりの現場に人工知能の技術を取り入れようと提携。1台のロボットが学習した内容をネットワークを通じてつながるロボットが共有します。故障を予知したり、ロボットどうしが助け合ったりすることで、生産活動が止まらない工場の実現を目指しています。
 

 
 
Q:日本を代表する大企業と相次いで提携しているのはなぜですか?

A:私たちは、得意な人工知能の技術を生かしてIoTの波に乗り、次のスタンダード(=技術基盤)を取りたいと考えています。そのためには、人工知能が埋め込まれるハードウェアと一緒に開発していかなくてはならない。ハードウェアは、非常に長い研究期間、開発の積み重ねがあって、われわれ1社ではとてもたどり着ける領域ではありません。

幸いなことに、日本ではモノをつくる分野で世界的に非常に優れた技術を持っている会社がある。こうした企業と連携することが、グローバルで勝ち抜いていくための最短の戦略だろうと考えています。

 

大きな転換期を迎えた人工知能技術

Q:この数年で人工知能への注目が急速に高まっています。ご自身は、どういった変化が起きていると感じていますか?

A:1つには、モノを認識する精度が飛躍的に向上しています。例えば、ファナックとは、ロボットがバラバラに置かれた部品を自動的につかむことを覚える技術を開発しています。これまでは、モノを認識する精度がそもそも低かったので、モノをつかむこと自体が難しかった。このため、ロボットができることは人よりも少なく、決まり切った動きしかできませんでした。

しかし、今、モノを認識する精度がどんどん人に近づきつつあります。モノを認識する精度が実用的なレベルとなり、人がやっている仕事をより柔軟にこなせるようになったことが大きな変化だと思います。

世界のIT企業にどう対抗するか


人工知能を巡っては、グーグルが第一線の研究者が立ち上げたベンチャー企業を相次いで買収したほか、フェイスブックや中国の検索大手バイドゥなどが研究開発に莫大な資金を投じるなど世界のIT企業がこぞって力を入れています。

Q:世界のIT企業と、どう伍していくお考えですか?

A:例えば、グーグルは研究者も圧倒的に多いですし、優秀な人がどんどん吸い込まれていくので、言い方は悪いですが、うっとおしい存在です。私たちがグーグルがやっている分野に真っ向から参入しても勝てるとは思っていません。昔で言うと、ちょうどマイクロソフトに、OS(=基本ソフト)で戦いを挑んで勝つのは難しかったということと同じです。

そこでグーグルはどうしたか? ウェブサービスという領域を広げて、マイクロソフトより大きくなることに成功しました。私たちもパラダイムシフトを起こしていかないといけない。グーグルにとって代わる存在になる、というよりは、グーグルが作り出した世界観の次を作り出していかないといけません。

Q:グーグルの世界観の次とは?

A:IoTと人工知能を組み合わせて実現する「産業用のインターネット」です。この領域は、まだまだ非常に多くのイノベーションが必要とされていると感じています。日本は世界を見渡しても、製造業では今なお非常に大きなプレゼンスと高い技術を持っています。世界的に見ても、日本は恵まれた環境にあると思っています。

 

Q:これまで人にしかできなかった作業が機械化されることで、どんな世界が待っているのでしょうか?

A:1台のロボットがみずから学習して賢くなるだけでなく、複数の機械が高度なタスクを一緒に解いていくと、これまで人間が考えてできなかったようなことも可能になります。一方で、人間の知能を大きく超えるのかというと、まだまだそれはないと思っています。

例えば、言語能力にしても、論理的な思考能力にしても、人間の脳の思考能力は解明されていない部分が多くありますので、機械による置き換えは進みません。機械化が進めば、人はもっとクリエイティブなところに注力することができるようになると思います。

これまでインターネットは、人と人をつなぐものでした。私たちは機械どうしが自由に協調し合えるような新しいインターネットの基盤を作っていきたいと考えています。

取材を終えて

名だたる企業がこぞって提携を求めるベンチャー企業を経営する西川さん。語り口や物腰がソフトな一方で、技術やグーグルに話が及ぶと、次第にその口調は熱を帯び、強い信念を感じました。

西川さんは「今は人工知能のブームだが、2、3年後には人工知能は当たり前の技術になっている」と予言します。人工知能という新たな技術に携わりながら、その次を見据えて新しい研究開発に取り組む技術屋集団。国内メーカーとの連携で、世界のIT企業との競争に打ち勝つことができるか、これからに注目です。



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