トヨタ、米ウーバーと提携 「ライドシェア」で協業 の先は?IoT、AI 、6-Tech
トヨタ自動車は24日、ライドシェア(相乗り)を手がける米配車サービス大手、ウーバー・テクノロジーズと提携することで合意したと発表した。米国でウーバーは自家用車を使ったタクシーのような送迎サービスで急成長しており、トヨタは海外での車両リースやソフト開発で協業する。配車のノウハウは、開発が進む自動運転車の普及にも欠かせないとみられ、トヨタは取り込みを図る。
提携では、米国など海外でウーバーの運転手にトヨタ車をリースし、運転手が収入からリース料を払う仕組みをつくる。運転手向けの車載アプリの開発でも協業する。子会社のトヨタファイナンシャルサービスなどが出資するが、金額は非公表。「小規模の出資にとどまる」(ブルームバーグ通信)との見方がある。
ウーバーは日本でもタクシー会社と提携した配車サービスを行っている。トヨタやウーバーの日本法人によると、現時点で国内では提携に伴う新サービスの予定はないという。
ウーバーは、自家用車の持ち主が空いた時間にタクシー運転手のように客を送迎するサービスの草分けで、米国をはじめ世界各地で存在感を高めている。非上場だが、市場で想定される企業価値は6兆円超と、ゼネラル・モーターズ(GM)を上回る。
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グーグル共同創業者、「空飛ぶ自動車」開発の2社に投資=報道
[0609] - 米アルファベット(GOOGL.O)傘下のグーグルの共同創業者、ラリー・ページ氏は「空飛ぶ自動車」を開発している新興企業2社を支援している。ブルームバーグが9日、報じた。
このうち1社のZee.Aeroには2010年の創業以来1億ドルを超える資金を投資。同社はマウンテンビューにある米航空宇宙局(NASA)の敷地内に生産設備を保有している。
もう1社はキティホークで、ページ氏は昨年から投資を開始。ブルームバーグは同社は「巨大なクアッドコプター・ドローン」に似た乗り物を開発しているとしている。
ページ氏は両社に対する投資を公表しないよう要請していた。
Zee.Aeroとキティホークからコメントは得られていない。
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世界のタクシーからドライバーが消える? 「料金10分の1でレイプの心配もありません!」 その究極の野望は…AI スマホ ロボット
スマートフォンを利用した配車サービスを手がける米国のウーバーテクノロジーズが、自動運転車の公道走行実験を開始した。ドライバーなしで運行する“無人タクシー”の実用化を目指している。低料金の配車サービスを世界各地で提供し既存のタクシードライバーから猛反発を食らう一方、自社の登録ドライバーによるレイプ事件なども問題になっているウーバー。その究極の野望は、タクシードライバーにとどまらず、自動車そのものを世界から“抹殺”することにあるようだ。
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ウーバーは5月19日、開発を進めている自動運転車の公道走行実験を米東部ペンシルベニア州ピッツバーグで始めると発表した。米メディアによると、ウーバーの自動運転車は米フォード・モーターの「フュージョン」のハイブリッド(HV)モデルをベースに開発。レーダーやレーザースキャナー、高画質カメラなどを備えており、走行データを収集し、2020年の実用化を目指し、システムの改善を図る。実験中は、「熟練ドライバーが運転席に座り、危険を回避する」という。
ウーバーは昨年2月に、ピッツバーグに本拠地を置き、ロボット工学で権威のあるカーネギーメロン大学(CMU)と提携し独自の自動運転技術の開発を本格化した。ウーバーが開設した「先端技術センター」には、CMUから大量の研究者が移籍したとされている。
ウーバーをめぐっては、5月25日にも興味深いニュースが発表された。トヨタ自動車がウーバーに出資し資本業務提携するというもので、ウーバーのドライバーにトヨタが乗用車をリースする。自動運転技術の開発でも協力する可能性も取り沙汰されている。
ウーバーが自動運転車の開発に本腰を入れるのは、ドライバーという移動・輸送手段における最大の“コスト”の削減にある。無人タクシーが実用化されれば、その料金は、有人タクシーの「10分の1以下」になるといわれている。
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2009年に創業し、企業価値600億ドル(約6兆5000億円)超にまで急成長を遂げたウーバーは、一般ドライバーが運転する自家用車で客を運ぶ「ライドシェア(相乗り)」をビジネスモデルとしている。スマホのアプリで手軽に車を呼べることに加え、客が運転手を評価する仕組みが人気を呼び、世界60カ国以上に進出した。
一方で、客を奪われた既存のタクシー業界は猛反発。米国や英国、フランス、アルゼンチンなどでドライバーが大規模な抗議デモを行うなど社会問題になっている、スペインやオランダ、タイなどでは、法律違反のいわゆる「白タク」に当たるとして業務停止処分が出された。日本では14年に提携先のタクシーを配車するサービスを開始したが、福岡市で始めた自家用車の配車サービスの実証実験「みんなのUber」は、運輸省の指導により中止になった。
またインドで14年にウーバーの登録ドライバーが女性客をレイプする事件が発生し、利用者の不安が高まり、業務停止に追い込まれた。米国でもボストンでドライバーによる誘拐・強姦事件が起きたほか、今年4月にミシガン州で起きた8人が死傷する銃乱射事件の容疑者がウーバーのドライバーで、事件を起こした際に客を乗せていたことが判明し、社会に大きな衝撃を与えた。
ウーバーにとって、ドライバーの資質向上は大きな課題だが、自動運転の“無人タクシー”が実現すれば、コスト削減だけでなく、その悩みも一気に解決できることになる。もちろん、仕事がなくなるタクシードライバーたちをさらに激怒させることは言うまでもない。さらに、現在の登録ドライバーたちもお払い箱となる。
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「(自動運転車の実用化は)われわれにとって興味深い挑戦だ。より豊かな生活を手に入れることができ、より良い世界になるだろう」
ウーバーを共同創業したCEO(最高経営責任者)のトラビス・カラニック氏は、講演やメディアの取材に対し、自動運転車を開発する意義をこう強調してきた。
「より少ない車でより多くの客を運べるライドシェアが普及すれば、交通事故や渋滞、公害といった害悪をまき散らす自動車の保有台数を減らすことができる」というのが、トラビス氏の持論である。そして、トラビス氏が描く究極の交通システムが、自動運転の“無人タクシー”によるライドシェアなのだ。
「自動車を保有するコストよりも、無人のウーバーを利用する方が安くなれば、誰も乗用車を保有しなくなる」
かつてトラビス氏は、こんな未来を予測していた。つまり、単純な移動・輸送手段としての自動車をこの世界から消し去ることが、彼の野望なのだ。
サンフランシスコであまりにもタクシーがつかまらないことにはらを立てたことがウーバー創業の動機だったというトラビス氏だが、タクシーどころか自動車そのものに“敵意”を抱いているようだ。
自動運転車をめぐっては、日米欧の大手自動車メーカーのほか、米国のグーグルやアップルといったIT企業が開発にしのぎを削っている。
自動運転は、自動車メーカーにとっては、究極の安全運転技術の追求であり、IT企業にとっては、夢のテクノロジーの追求にほかならない。これに対し、ウーバーは自動車を単純な移動・輸送手段と位置づけ、それに取って代わる交通システムの構築を目的としており、根本的な発想がまったく違う。
自動車の“抹殺”を目指すウーバーにトヨタが出資したのは、何とも皮肉なことである。
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参考
急速に広がる自動車の自動運転、京都企業が技術開発に注力
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ウーバー「縛りだらけ」の日本参入 タクシー業界抵抗
京都・京丹後市で事業開始
米配車アプリ大手のウーバーテクノロジーズは26日、日本で初めて一般の運転手が客を有料で同乗させる事業を京都府京丹後市で始めた。乗車できるのは一部地域に制限され、運転手や車両は国に登録が必要で、がんじがらめのスタートだ。背景にはタクシー業界の強い抵抗がある。世界で事業を拡大する同社にとって、日本は狭く険しい道となる。
タブレットを使いウーバーのシステムを見せる住民ドライバー(京都府京丹後市)
「やっとスタートがきれた」。京丹後市で開いた記者会見。日本法人ウーバージャパンの高橋正巳社長の言葉にはこれまでの苦労がにじんだ。
新サービスは住民が運転する自家用車と乗客をウーバーのシステムで組み合わせる。18台が参加し、料金はタクシーの半額程度。ウーバーは料金収入の一部を受け取る。
自家用車で乗客を運ぶことが「白タク」として禁じられる日本でも公共交通機関の空白地帯なら認められる。だがウーバーが住民やタクシー会社への説明会を繰り返すなかで様々な縛りが付いていく。客が乗れるのは過疎が深刻な一部地域に限り、日々の運行実績を市に報告する方針が決まった。いずれも米国では必要ない。タクシーのように縛られ本来の自由なビジネスとはかけ離れた。
この間、大手タクシー会社の幹部が調査の名目で京丹後市入りし、プレッシャーをかけるかのような動きをしたことも影響したとの見方がある。
70カ国・地域で事業をするウーバー。日本ではつまずきの連続だった。昨年に福岡市で始めた配車実験は運転手への報酬が違法の恐れがあるとして国が中止を指導した。
今年2月には富山県南砺市との実験計画を発表。訪日客の受け入れ体制を充実させようと田中幹夫市長が主導した。これにタクシー業界がかみついた。本格参入されれば市場を一気に奪われる――。市議会議員への働きかけを強め、市は3月、実験予算を撤回する。田中市長は「予算の計上前に発表すべきではなかった」と悔しがる。
富田昌孝全国ハイヤー・タクシー連合会会長は「白タク解禁や合法化の動きにはいかなる妥協も条件付き容認もない」と言い切る。タクシー会社は中小が多く、グローバル競争とは無縁だ。東京などでは新規参入ができず、供給過剰になれば国が強制的に減車させる。
既得権益が色濃いだけに、米国で多くのタクシー会社を経営危機に追い込んだウーバーへの警戒心は強い。ウーバーへの出資を決めたトヨタ自動車も「規制などの状況を踏まえて日本は協力の対象外にした」。
米国のベンチャーに揺さぶられるのはホテルも同じ。だがタクシー業界に比べると抵抗感が薄いようだ。一般住宅などに旅行者を有料で泊める民泊仲介サイトの米Airbnb(エアビーアンドビー)。同社を通じて14年7月~15年6月に約5000人が部屋を貸し約52万5000人の訪日客が滞在した。利用増を追う形で規制緩和が進む。
いつまでも競争を排除するタクシー会社の姿は異様に映る。事業者の都合が優先されたままでは、日本の消費者の利便性は置き去りにされる。
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IoT の研究 「AI新時代」 出遅れた日本 勝ち目はあるのか
米ワシントン。桜の季節を迎えた4月、数百人の医療関係者らが参加するイベントが開かれた。
「がんに関連する300冊の学術誌と200冊の教科書、1200万ページの文献を読もうとすれば医学生なら眠りに落ちる。でもワトソンはそんなことがない」
米IBMのバージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO)が同社の人工知能(AI)「ワトソン」の優位性を語ると、会場に笑いが広がった。
がん治療の世界では、医師個人が最新の知識をすべて把握することはほぼ不可能である。また、がんの症状は患者によってさまざまで、個々の患者にどのような治療を施すかの判断は担当医の経験に負うところが大きい。
IBMが描くのは、ワトソンによる「深層学習(ディープラーニング)」で過去の膨大な実例から治療法と治癒の度合いの関係性などを見つけ出し、そこに最新の研究成果を加味し、個々の患者に対する最適な治療方針の選択肢を医師に示すという未来だ。
IBMは2010年以来、ワトソンやビッグデータ分析の分野に計150億ドル(約1兆6000億円)を投資してきた。「大量のデータから学んで答えを導き出す」機能は医療だけでなく、商品の売り上げや金融市場の動向分析から、料理レシピの開発まで幅広く応用できる。こうしたサービスを企業向けに提供することで15年には180億ドルの収入を得た。
今年2月、そのIBMに激震が走った。ワトソンの企業向け事業部門を率いるステファン・プラット氏の辞任が報じられたのだ。プラット氏は昨年10月に約2000人を擁する同部門のトップとなったばかり。辞任後の今年3月には自らの人工知能関連企業「ヌードル・Ai」を立ち上げ、IBMに反旗を翻した。
“離反”の背景にあるのは人工知能ビジネスの成長性だ。プラット氏は「人工知能の活用は今後3~5年間で各企業にとって最も重要な差別化要因となる」と市場拡大に期待する。
米調査会社IDCによると、人工知能の活用が可能なビッグデータ分析の関連市場は毎年20%超のペースで成長し、19年には世界で486億ドルに達する。この成長市場にIBMやグーグル、マイクロソフト、アマゾンなど大手のほか、新興企業も競争に加わり、群雄割拠の様相を呈している。
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「米国企業が年間1兆円を超える巨額の研究開発費を投じて覇権を争っているのに対し、日本は出遅れた第2グループの中団だ」
人工知能学会の松原仁会長はこう解説する。先頭を走る米国の背中は遠く、後ろでは第3グループの韓国や中国がひたひたと追い上げている状況だ。
危機感を抱いた日本政府は今年4月、研究開発の司令塔となる「人工知能技術戦略会議」をようやく創設した。「非常に厳しい状況の解決は喫緊の課題。産官学一体で実のある研究に取り組む」。初会合で議長の安西祐一郎日本学術振興会理事長はこう決意を語ったが、その展望はまだ見えない。
今年3月、米グーグルの人工知能「アルファ碁」が世界トップ級の韓国人プロ棋士を相手に成し遂げた歴史的な勝利は、日本でも反響を呼んだ。
「私たちが初めて人間に勝つつもりだったが、先を越されてしまった」。動画サイトを運営するドワンゴの山川宏人工知能研究所長は悔しさを隠さない。世界最強の囲碁ソフトを開発すると発表してから、わずか約1週間後に味わった“敗北感”だった。
トヨタ自動車は今年1月、米国に人工知能研究の新会社を設立。5年間で10億ドルを投資すると発表した。日本企業としては最大規模の投資だが、米企業と比べると小粒の印象はぬぐえない。東京大の松尾豊特任准教授は「日本企業は伝統的にものづくりを重視し、ソフトへの投資に消極的な傾向があるためだ」と背景を分析する。
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人工知能の発展には人材も欠かせない。海外では既に獲得競争が過熱している。2013年3月、米グーグルは人工知能の第一人者、カナダのトロント大のジェフリー・ヒントン教授が設立したベンチャー企業を買収、研究室の大学院生2人も獲得した。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、スタンフォード大で情報処理を学ぶ大学院生が、ある企業から年俸100万ドル超での就職を提示されたケースもある。
日本は人工知能の研究者が少ないわけではない。米国を中心とする国際学会の会員が5000人以上なのに対し、日本の人工知能学会も約4000人に上る。ただ、産業技術総合研究所の辻井潤一人工知能研究センター長は「人数だけではだめだ」とくぎを刺す。社会を激変させる研究には、欧米のように社会の未来像まで描ける人材が必要と強調する。
国は出遅れを挽回するため、新たな体制づくりを急いでいる。文部科学省は今年4月、理化学研究所内に「革新知能統合研究センター」を新設。国の戦略会議と連携して人材育成や産業との橋渡し、従来の縦割り行政では困難だった他省庁との合同研究に取り組む。
センター長に就任した杉山将東京大教授は「欧米の後追いではなく、世の中を変える革新的技術を作り、フロントランナーを目指す」と意気込む。
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日本に勝ち目はあるのか。人工知能学会の松原仁会長は「ネット上の情報蓄積を収益に結び付けたグーグルやフェイスブックのビジネス手法は曲り角を迎えており、そこに日本のチャンスが生まれる」と話す。
人工知能はネット世界での展開が飽和し、自動車や医療など現実世界の産業との連携に移行しつつある。日本の得意分野を生かすことで突破口が開けるかもしれない。国立情報学研究所の喜連川(きつれがわ)優所長は「日本は人工知能の基礎になるビッグデータ分野で世界をリードしてきた。その強みを生かせば勝機は必ずある」と指摘する。
政府は人工知能を成長戦略の柱と位置付け、今年度から始まった第5期科学技術基本計画の重点に掲げた。あらゆる産業構造に変革をもたらす人工知能。その荒波をどう乗り越えるかは、日本の産業競争力を大きく左右しそうだ。
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日本の大企業に巣食う「根深い病魔」の正体~唯一の処方箋は「組織の民主化」しかない! 東芝、シャープ、三菱自動車…/ 会社を追い出される「プロ経営者」の共通点
日本の大企業に巣食う「根深い病魔」の正体~唯一の処方箋は「組織の民主化」しかない! 東芝、シャープ、三菱自動車…
日本企業の不正・凋落が意味すること
東芝の粉飾決算が発覚したのがちょうど一年ほど前のことだったが、今年は同じようなタイミングで三菱自動車の不正が明らかになった。
その後、東芝は深刻な経営不振に陥り、成長が見込まれていた医療機器子会社をキャノンに売却、白物家電事業も中国の美的集団に売却した。
不正の舞台ともなり、一時、富士通やVAIOとの三社統合に向けた話があったパソコン事業からも撤退の方向だ。株式は特設注意市場銘柄に指定され、歴代三社長は提訴された。決算修正も相次ぎ、もはや世間の信頼は完全に失われた。
三菱自動車も不正発覚で受注が半減したが、こちらは日産自動車の傘下に入ることを決めるまでのアクションは速かった。
しかし、もちろんそれで問題が決着したわけではない。徹底した真相究明が待たれるが、カルロス・ゴーン社長と親交が深く、提携を主導した益子修会長が「留任」という報道などを見ると、不正の背景や責任の所在をどこまで明確にできるのか疑問に思う。
一方、経営不振が続いたシャープは結局台湾企業ホンハイに買収され、トップもホンハイで郭台銘会長を支える戴正呉副総裁に代わることが発表された。
日本を代表する錚々たる大企業に、今、立て続けに起きている一連の出来事は何を物語っているのであろうか。
日本の大企業に巣食う「根深い病魔」の正体~唯一の処方箋は「組織の民主化」しかない! 東芝、シャープ、三菱自動車…
テクノロジー主導で起こる大変化
筆者の見解では、これらの出来事は日本の多くの企業に共通する構造的な問題や体質に起因していて根が深い。他企業にとっても決して対岸の火事ではすまされないと言える。
現在、テクノロジー主導で世の中は大きな変化を続けている。インターネット、クラウド、SNS、モバイル、IoT、人工知能等に関する話題はこれまでにもさまざまな機会で何度も取り上げて来た。
デジタルマーケティングや人工知能の活用によってビジネスのやり方を改め、自社の競争力を強化することの重要性については、今や多くの経済人が意識するところだろう。実際にさまざまな手を打つ企業も増えている。
また、民間車を配車するUberや民泊を仲介するAirbnbのような、かつてなかったビジネスモデルで急成長する新興企業が続出している。
「シェアリングエコノミー」や「オンデマンドエコノミー」などの言葉もさかんに使われるようになった。先進国においては、「所有する経済」から「共有する経済」へのシフトは時代の流れでもある。
経済社会の発展に伴って第一次産業から第二次産業さらには第三次産業にシフトしていくという経済学の古典的法則である「ペティ・クラークの法則」に例外はない。インターネットの進化がそのシフトを加速しているとも言える。
これを新たなビジネスの創出機会と捉える人もいれば、既存ビジネスが破壊される脅威として捉える人もいるが、これまでの資本主義経済の流れが大きな転換期を迎えていることへの意識が大きく高まっていることも間違いないだろう。
社員の自主性や倫理観を尊重するグーグル
しかし一方で、いわゆるネット時代やデジタル時代には、これまでの産業革新の時代とは異なる経営スタイルやワークスタイルが求められており、それを踏まえた企業変革が急務であることについては、日本の大手企業の認識がまだ甘いように感じる。
ネットやデジタルは技術を民主化した。最先端のテクノロジーはクラウド経由で従来よりもはるかに安いコストで利用できるようになった。それに合わせて、本来、企業も民主化しなければならない。
すなわち、従来のような、自社単独の組織力に依存したクローズドでトップダウン型のスタイルからは脱却して、現場の社員一人ひとりの創造性やモラルを最大限に活かした「オープンでフラットな組織」に変容させていかねばならないのだ。
階層や縦割りはできるだけ排し、現場に大幅な権限委譲を行なわねばならない。現場は現場で、受け身体質から脱却して、自らの自主性を大切にした働き方に転換することが求められる。
ネット時代の申し子であるグーグルは「グーグルが掲げる10の事実」をホームページに掲載している。その四項目めは「ウェブ上の民主主義は機能します」であり、六項目目は「悪事を働かなくてもお金は稼げる」である。
社員の自主性や倫理観が尊重され、フラットな組織でスピーディにイノベーションを起こす。不正等の問題も発覚しやすく、いざというときには自浄作用が上手く機能する。
いわゆる「Wisdom of Crowds」が企業の成り立ちの最初から構造的に組み込まれているのだ。
まずは組織を民主化せよ
私がグーグルの日本法人に在籍していたときに、ステルスマーケティングの形跡がある事例が発見されたことがある。
インターネットの健全で公正な発展を標榜するグーグルでは、ステマは禁止行為だ。この問題は現場の一般社員が発見し、その後、米国本社も巻き込んで徹底した真相究明が行われた。
一担当者の勇み足ではあったが、結果的には、google.co.jpのページランクを落とすという処罰を自らに下した。日本法人の立場では残念な事例ではあったが、このようなケースに自然と自浄作用が機能する健全性を密かに頼もしくも思ったものだ。
グーグルのような会社が、ネット時代以前のレガシーを一切引き摺っていないのに対し、高度成長期の経済発展を担ったような日本の成熟企業は、その時代に最適化された仕組みやワークスタイルをいまだに重く引き摺っている。
線型的な予測に基づいた中期計画や事業計画を立案し、失敗を許容しない。短期的な利益追求が圧力となり、自らの技術資産や組織のサイロに依存し続ける。その結果、自社内を繋ぐことも他社とのオープンなエコシステムを作ることも容易ではない、等々。
いつまでも古い体質を温存し、組織を民主化できずにいることこそが、技術が民主化された時代における成熟企業の不正や凋落を招く根本原因となっているのではないだろうか。
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原田泳幸、藤森義明…会社を追い出される「プロ経営者」の共通点
そうか、アレが足らなかったんだ
マクドナルドからベネッセに移った原田泳幸元社長、日本GEからLIXILに移った藤森義明元社長が相次いで実質的に解任されるという事態が続き、プロ経営者への注目が高まっているようです。
著者自身も「プロ経営者」の端くれではあり、外部招聘経営者の経験があります。今回はその経験を踏まえたうえで、落下傘経営者が辞めさせられる背景や理由について考えてみたいと思います。
結果よりも感情、の世界
まず、先のお二人ですが、原田さんの場合はベネッセで起こった情報漏洩事件の対応のまずさでミソをつけたとされています。
一方の藤森さんの場合は、積極的なM&Aで企業規模を急拡大させたものの、買収した企業の子会社の粉飾決算により、多額の損失を被ることになってしまったことが原因で解任されました。確かに二人ともミスをしたことは否定できませんが、それが直接彼らの責任かと言えば、微妙なところでしょう。
つまり、経営者が辞めさせられる理由は、必ずしも「結果が出なかった」からではない、ということです。結果が出ないのにずるずると居座っている人もいれば、結果を出していても追放される人もいます。
ある上場企業の社長は、上場会社の子会社での取締役に次いで、投資会社が買収した非上場会社の社長に就任し、合わせて9年ほど外部招聘経営者を務めていました。この間、彼は一期も責任領域での業績・利益を改善させたことはありません。
にもかかわらず、現在の会社で3度目の外部招聘の経営者として社長に就任しました。さらに就任後半年以上経過した最初の決算において上場以来初の赤字を記録したものの、解任はされませんでした。理由は定かではありませんが、その会社の創業一族と接点があり、彼らから見初められて社長になったから、というのが専らの噂です。
これと対照的なのがクックパッドでしょう。前社長の穐田誉輝(あきたよしてる)氏は業績を大きく伸ばしていましたが、退任することとなり、代わりに創業者に近しい人が社長に就任しました。
こうした差はなにによるのでしょうか。
なぜ結果を出しているのに、追い出されてしまうのか
言うまでもありませんが、誰を社長にするかは、指名をする人が必ず存在します。多くの場合、それは最大株主や実質の最高意思決定者などです。そうした権力者・実質的なオーナー(以下、実態オーナー)が、なにがしかの理由でその経営者を「気に入ったから」採用し、「気に入らなくなったから」辞めさせている――。身も蓋もないようですが、それが現実だと私は思っています。
指名委員会等設置会社であったり、そのガバナンスが正常に機能している上場会社であれば話は別ですが、そうでもない企業は、たとえ上場していたとしても、実態オーナーは社員や自分以外の株主などの関係者に説明責任を果たすという意識を持っていないことは珍しくありません。
著者の知人の落下傘経営者(取締役)の例では、同時期にやってきた落下傘幹部たちのなかで彼だけがいち早く結果を出してきたがゆえに、他の幹部、そして実態オーナーからも嫉妬のような感情を持たれてしまいました。
器用な人であれば他の幹部たちや実態オーナーへのゴマすりも欠かさずきちんと行っていたのでしょうが、彼はそうした行動をあまり取りませんでした。「そんな暇があるなら社員と向き合うことに時間とエネルギーを使う方が良い」という理屈でしたが、その間に他の幹部は実態オーナーの元に日参し、彼についてのネガティブな情報をあることないこと一所懸命レポートしていたのです。
結果として、彼と社員以外の関係者の利害(?)が一致することになり、追放されてしまったのです。
ここで注目すべきは、なぜ実態オーナーが、結果を出している経営者に対してネガティブな感情を抱くのかということです。先の例でも実態オーナーが少し社員に確認すればすぐ真偽はわかったはずですが、そうはしませんでした……。不思議ですよね。
「気に喰わない」と思い始める哀しい理由
一般的に、実態オーナーは自分が雇ってきた経営者を「気に入らない」と思い始めるきっかけには大きくは2つあると考えます。
1つは、実態オーナーが自分自身で心の整理がついていないまま、事業承継をしたパターンです。実態オーナーが創業者もしくは中興の祖であって、元々は一線引くつもりだったものの、雇った経営者と話をしたり、実際に社員を率いてやっている姿を見たりするにつけ、今まで社内で見なかったレベルの最強の部下がやってきたと思って、自分も一緒にやりたくなってきてしまうことは珍しくありません。
特に実績を残せなかった創業者の二代目や三代目社長は、「やっと俺がこの『部下』を使って、足跡を残せる時がやってきた」と前のめりになったりします。
ところが新旧リーダーが一緒になると、必ずどこかでどちらかがイライラし、衝突が出てきます。実態オーナーからすると、いくら新経営者が業績を伸ばしても、自分の高い理想を達成するにはまだまだ距離があると思って、不満に思ってきてしまうのです。結果的に「やっぱり俺がやらないとダメだ」と思い始めるわけです。
大手上場会社でも、何度も社長を外部募集したり、創業者がいったん社長を後任に譲ったもののまた復帰したりする例は、そうした心理が働いていると推測されます。決して成果を横取りしようというのではなく、純粋に会社にとって良かれと思っているわけですし、本人にまったく悪気はない分、質が悪いかもしれません。
もう1つは、実態オーナーによる疎外感です。一線を退いた後に、新しく別の事業を始めたり、趣味の世界に没頭しようとしても、なかなかしっくりこないことが多いのでしょう。何かの趣味をはじめても、回りにイエスマンしかいなかったような環境とは違い、同じ趣味を持った人たちにずけずけといろいろなことを言われてしまう。家に帰れば(留守にしていた期間が長いために)家族には冷たくされたりして、居心地の悪さを感じていきます。
そんなとき、ふと会社のほうを見ると、以前は(少なくとも表面的には)「はい!はい!」と従順だった部下たちが、次第に新社長の方を向くようになります。そうすると、動物的な本能による嫉妬というか、「場」を取り返したいという感情が芽生えてくるのです。
日本で歓迎される「プロ経営者」の資格とは
こうしたネガティブな感情に火が付くと後戻りは出来ません。原因は何にせよ、実態オーナーは自分が雇った今の社長を交代させる理由を探しに行くようになります。
考えや行動が古いために新社長に冷遇された古参社員などから愚痴や不平不満を聞いたりすると、勝手にそれを「社員全体の意見」としてあげつらったりして、「新しい流れに組織がついていってない。社員も困惑している」と捉えます。「意見を言えるのは俺だけだ」なんて妙な正義感も芽生えてきます。
しかも厄介なのは、こうした実態オーナー本人には、問題のある行動をしているという自覚は殆どなく、「会社のためだ」という純粋な想いをもっているということです。
恐らく、大塚家具のお家騒動はまさにこのパターンではないでしょうか。創業者の大塚勝久氏は、娘・久美氏が継いだ会社の競合となる新会社を作って、実態的に社員を引き抜く、という大胆な行動に出てしまいました。
外から見ている分には劇場的で興味をそそられるかもしれませんが、BtoCのビジネスにおいて、社員の動揺を増幅させるような事象が続いていることは、元の会社、新会社ともに今後苦戦する確率を高めたことは間違いないでしょう。
はっきり言えるのは、物事を大きく変えなければいけない局面では、船頭多くしてうまくいくことはほとんどないということです。
資生堂やサントリーなど有名企業においても外部招聘経営者が起用されていますが、彼らがそうした理不尽な騒動に巻き込まれないためには、実態オーナーのご機嫌を取りながら彼らの感情を上手くコントロールすることが前提条件となるのです。
日本で歓迎される「プロ経営者」とは、それができる人のことを指すのかもしれません。
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第4次産業革命
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ICTニュース
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